金融円滑化法終了に伴い、経営革新等支援機関認定制度が始まり、ホテル・旅館のみならず様々な形で対応している。
その中で、経営計画をきちんと作成することが要綱に上がっており、各企業ともに税理士の先生や、コンサルタントなどその他専門の方と軽軽計画を策定しているのであるが、その経営計画について今回は触れていきたい。
経営計画を策定するのであれば、当然、金融機関との折衝を伴っている。
金融機関としては、何年後の黒字化なのか、債務超過は何年で解消するのかといったことに着目し、計画としても、そのような数字の落とし込みを行っているところが多い。
実際に、できた経営計画をみると、すべてとは言わないが、金融機関への対策をにらんでの強引な数字作りをしているような計画も見受けられる。
しかし、これはもちろん本来ではない。
実は経営計画を策定する際に一番大切なことは、金融機関の評価は低いかもしれないが、『社長(経営者)の思い』なのだと私は考えている。
この会社がどの方向に進むべきか、自分の会社に愛着と誇り、そしてどんなこだわりをもっているのかといった社長の思いこそが、会社として進むべき進路となる。
経営計画を策定するうえで、はっきりしているのであれば、それを基本として、もし、忘れてしまっていたり、ぼんやりとしているのであれば、はっきりと浮かび上がらせること。
これこそが、まさに計画の第一歩なのだと考えている。
そして、次に浮かび上がった『社長(経営者)の思い』をしっかりと幹部や従業員に伝え、理解、共有し、進むということが大切である。
この思いを周知、認知、浸透させることによって進むべきベクトルを合わせることができ、それが他社との差別化を図ることになったり、営業成績の向上につながったりと、会社の発展の礎となるのだと思う。
今回はホテル・旅館に限った話ではないが、最近の経営計画があまりにも金融機関対策化しているものが多く見えるので、このような話をした。
金融機関への対策はもちろん必要である。
しかし、本来の計画を策定する目的は会社の発展であり、そのためには進むべき方向をしっかり見失わないようにしなければいけない、本来の経営計画を策定する目的こそ見失ってはならないのではないだろうか。
今回は本末転倒になってしまっている経営計画について、警鐘を鳴らしたい。
| 2013年07月30日|
温泉に入るのは日本だけか。
もちろんそんなことはない。
温泉地は世界中にあり、韓国や台湾などには日本のような温泉地が数多く存在する。
またイギリスのバース温泉は世界遺産に認定され、お風呂という意味の英語『BATH』の語源になったくらいである。
前月号で紹介した、ドイツのバーデン・バーデンは日本語で温泉温泉という意味で、まさに温泉が街の中心になっているということである。
そのドイツでは『クアオルト』という制度がある。
これは日本語で『健康保養地』という意味で、気候や自然の力を活用し予防や治療を行う地域を認定する制度で、ドイツ国内では400か所近くも存在し、その中の一つに温泉という着目点がある。
長期滞在し、ゆっくり湯治を行い専門の医療機関もあり健康増進させるということが、国内で公式に決まっているということである。
そのドイツにならって、国の公式というわけではないが長期滞在、湯治、健康増進、医療ということに注目し、日本版クアオルトに取り組んでいる地域ヘルスツーリズムと重なってかが最近日本でも多くみられるようになってきた。
その代表定期な地域を2つほど紹介したい。
まず、最近非常に力を入れているのが山形県かみのやま温泉である。
山形県上山市では、自然の中を歩くウォーキングを題材としてクアオルトに取り組んでいる。
具体的には、上山市の中にウィーキングコースを設置し、ウォーキングによる健康増進効果に加えて、本来の温泉地を活かした湯治や食事、自然や文化などを合わせて地域として滞在型温泉健康保養地、日本版温泉クアオルトに取り組んでいる。
いわば、温泉が持つ元々の湯治の効果に注目し、長期滞在を狙い地域を上げて健康というキーワードの基一致団結しているのである。
同じ様な取組みが国内で、和歌山県田辺市で熊野古道を活用して、また大分県由布市で由布院温泉を利用してという形で行われている。
ここで、大切なことは、以前も別の観点から紹介したが、旅館やホテルという単位では作ることができない、地域、特にこのクアオルトには地域、温泉、医療と様々な結びつきが無いと行うことができないということである。
繰り返しになるが、かつてのような団体客のツアーという企画では正直今後も右肩上がりは望めない状況であるなか、新たなツアー客の獲得ということであれば、この日本版温泉クアオルトのように、その場所として、地域として魅力的な場所にならなければ今後はいけない。
そのために、地域連携は今こそ必要なのだと考える。
| 2013年07月18日|
かつての日本の温泉と言えば、『湯治』というのが当たり前であった。
例えば江戸時代当時は庶民の旅行と言えばお伊勢参りを代表とするような参詣というのが基本で、あまり観光に行くということはなかった。
もちろん今のようにレジャー産業が育っていないということもあるが、交通手段もない中、遠方地までわざわざ行くという習慣がなかったのである。
もちろん、江戸時代は“藩”という制度があり、勝手に自身の藩を出ることが容易ではなかったという背景もある。
温泉、湯治はというと、枕草子や古今和歌集の中にも登場するが、奈良、平安期より当時の習慣はあったが、天皇や貴族の習慣であった。
また、武士の時代になっても大名や侍は湯治に行くという習慣はあったが、なかなか庶民まで温泉にいくという習慣はなかったのだ。
かといって、入浴が嫌だったわけではない。
ご存じのとおり、江戸時代にはいたるところに銭湯が発達し、そこは庶民の日常の中の憩いの場として日本全国に存在していたのだ。
では、観光として温泉旅館が発達したのはいつのころであろうか。
それは、2つにターニングポイントがある。
一つは明治期に入り、それまでの藩制度がなくなり、また鉄道などの発達によって移動が比較的容易になった時期、そしてもう一つは、戦後の高度経済成長きに頻繁に行われた団体旅行の時期である。
この2度目の旅行ブームにより、いわゆる大人数で行くマスツアーが発達し、それに伴い温泉旅館も大型に形を変えていった。
さて、湯治という習慣はどこへいったのであろうか。
もちろん、忘れていたわけではないが、いつしかマスツアーにウェイトを置く中、湯治という習慣は第一ではなくなっていた。
しかし、近年、健康ブームとも合い重なって湯治という習慣が見直されつつある。
そして、かつてのマスツーリーズムからヘルスツーリズムと趣向が変わってきている。
その先駆けとなったのが、ドイツのバーデン=バーデンという街である。
この街は世界でも有数の温泉地であり、その温泉を中心に街としてレジャーや街の散策といった健康に力を入れている。
ドイツでは温泉や気候、海や自然の力を活用し、予防や治療を行う街を国として『健康保養地(クアオルト)』として認定する制度があり、このバーデン=バーデンは温泉を使ったその代表といえる。
街の中には、温泉を使った治療施設はもちろん、専門医の常駐、交流施設そして滞在プログラムの作成が義務付けられている。
近年、日本でもこのドイツのクアオルトにならって、街として温泉を使い健康へのアプローチを行っていく日本版クアオルトに取り組む流れが出てきている。
次回はその日本版クアオルトを紹介したい。
| 2013年07月09日|
旅館の大きな特徴の一つに温泉がある。
これは、日本の“旅館”特有である。
みんなで、一つの風呂に裸で入る文化は他国にはほとんど見られない日本特有の稀有な文化で人気がある。
実はこの温泉について最近様々な取り組みがなされており、インバウンドも含め注目の鍵となっている。
そこで、今回は温泉について新たな取り組みについて2つほど触れてみたい。
一つは温泉本来の“湯治”についてである。
温泉には地域地域に様々な適応がありそこで深く湯治することにより健康増進の効果が親しまれている。
その部分を今一度見直す動きが最近注目されている。
いわゆる“ヘルスツーリズム”についてである。
これは、温泉地に湯治することに加え、散策や山歩きのハイキングなどを組んで健康志向で行うツアーである。
近年の健康志向のブームに、温泉が本来持っている健康への適応効果、自然から得られるリラクゼーション効果など非常に人気が高い。
例えば山形県の上山温泉では温泉に加え、湯治客に散策ハイキングを加えたツアーが人気であり昨年のヘルスツーリズム大賞を受賞している。
このヘルスツーリズムへの取り組みで重要なことは、一温泉旅館で取り組むのではなく、地域で連携して行うということである。
つまり、以前話した、地域連携によって、その観光地自体の集客を図っていくということである。
もう一つは温泉マニアという存在である。
彼らは、温泉旅館はもちろん、その地にある温泉、つまり湯について非常にこだわっている。
湯の成分はどうなのか、茶褐色や白濁、アルカリ性なのか酸性なのか、臭いはどうなのかと様々な観点で温泉とその適応を楽しみ自分の志向にあった温泉地めぐりを行っている。
例えば、民間では温泉ソムリエという資格があり、この資格では温泉への造詣を深め、まさにワインのように個性豊かな様々な温泉を楽しんでいる。
また、大阪観光大学では『温泉観光実践士』という独自資格を認定し、同様に温泉への造詣を深める講義を行っており、近年温泉愛好家に人気が高いという。
このように、潜在的に温泉を巡ることに人気が出ており、そのような志向のある客をいかにファンとして取り組めるのかということである。
また、彼らの周りには同じような趣味、趣向の仲間が居るということより、もちろん様々な地に赴いていることより厳しい目をもっているが、ファンになった場合のリピート確立は高く、口コミのスピードも高いのである。
このように、温泉ということについて最近では新たな取り組みがなされているということに注目していきたい。
次回はヘルスツーリズムの取り組みについて深く触れていきたい。
| 2013年07月03日|
以前、『敵を知り己を知れば、百戦して危うからず』という中国故事、孫子の言葉を紹介し、宿泊するお客の立場に立って旅館を見直そうという話をした。
これと同じように外国人観光客の立場に立って考えてみたい。
自分が外国に行ったときの事を考えてみたい。
どこの国に行ったとしてもその国特有の宿泊施設は必ずあるはずである。
しかし、私たちもその宿泊施設に泊まるであろうか。
ほとんどの観光客はホテルに宿泊するであろう。
それは、ホテルの持っている世界共通の品質やサービスには慣れているし勝手がわかるが故であろう。
これは立場が変わって日本を訪れる外国人観光客も同じなのだ。
つまり、勝手がわからない旅館、日本文化はハードルが高いのである。
では、何が外国人観光客から見てハードルが高いのであろうか。
これは、知人の外国人から聞いたのだが、一言で言えば旅館はすべてが知らないことだらけなのである。
もちろん、箸や畳などはなんとなくは知っているし、外国でも国によっては触れる機会もあるのだという。
実際に日本食のレストランは今や世界中にある。
しかし、実際に旅館の中で過ごすということは、外国人旅行者にとってはほとんどが未知の体験なのだという。
例えば、ごく当たり前のことであるが、座布団がわからないと伺った。
私たちはごく普通に座布団の上に座ると思っているのだが、外国人の話だと、クッションの上に座るとは思わなかったという。
このようなことが旅館の中にはたくさんあるのだという。
インバウンド対策を行う上で、数字の上の話や、外国人観光客が何を望んでいるのか、日本文化を存分にアピールするにはなど様々な思索がある。
しかし、外国人だから特別というのではなく基本的なマーケティングは同じなのである。
つまり、ターゲットを見込み、そのターゲットに対し的確にアピールし認知してもらう、そのためにはまずはターゲットとなる対象についてよく調べる。
まずは相手を知ることが第一歩なのである。
最後に、インバウンド対策のすばやい解決策の一つとして、外国人留学生のインターンを受け入れるという方法がある。
外国人留学生は、もちろん外国人なので日本人が気づいていない座布団のような例を指摘してもらえる上、繁忙の時はスタッフとして、そして外国人観光客を受け入れる場合は通訳としてもお手伝いしてもらえる。
留学生も日本の実際の現場で働けるということで非常にうれしいとのことでまさにウィンウィンな形となる。
この夏の繁忙期に外国人観光客の受け入れを検討するのであれば、ぜひ検討して見る価値はあると思う。
| 2013年06月26日|