第413回 外国人と向き合う ③

 先日京都を訪れた際に、修学旅行の小学生や中学生が、欧米人の観光客に対し積極的に話しかけ、一緒に写真を撮っている光景を何度か目にした。

 何とも微笑ましい光景ではあるが、何を行っているのかと引率していたタクシードライバーに聴いたところ、修学旅行中の課題の一つに外国人に英語で話しかけ、コミュニケーションを図り、課題達成の証拠として写真を一緒に取るとのことだ。

 外国人の評判は概ね良好とのことで、外国人旅行者は、日本人の子供と触れ合えてうれしいとの反応だという。

 注目したいのは京都という街は、修学旅行生が課題を遂行できるほど外国人旅行者がいるのだ。

 写真からでは日本人か外国人かどうか分かりづらいという理由から課題の対象にならないらしいが、アジア系の外国人旅行者を含めると多くの外国人観光客が来日している。

 では、彼らは何を求めて、日本に来て、何を求めて京都に行くのであろう。

 それは言わずもがな、『日本文化』を求めてである。

 確かに、京都には日本を代表する文化が数多く存在している。

 つまり、外国人旅行者が日本に期待していること、それはまさに日本らしさなのではないだろうか。

 それは、日本人が国内旅行の際に、地域色を望むのと同じである。

 しかし、多くの外国人旅行者が訪れる京都でも、旅館に宿泊する旅行者は限られ、多くはホテルに宿泊するという。

 そこに注目していきたい。

 以前も書いたが、旅館は日本文化の詰まった場所であることは言うまでもない。

 部屋、食事、接客と日本特有のものが多く、日本文化を望む外国人旅行者から見ればまさにというべきなのであるがホテル泊を選ぶ外国人が多いという現実、ここにインバウンドの注目点があるように思われる。

 言い換えれば、日本文化に興味はある外国人旅行者は日本の伝統的な旅館は、知らないか敷居が高いと感じているのではないかと思われる。

 外国人向けの日本の紹介本、またはインターネットを見ても、もちろん紹介はしてあるが、旅館についての記述は日本文化の詰まった旅館に対し淋しいように感じられる。

 もちろん、一旅館ではできない、行政部分によるところもあるが、旅館より何かを発信することも必要だと感じる。

 そこで、次回は外国人旅行者の目線に立ち、旅館というものについて考え、そこから具体的な方法をみいだしていきたいと思う。

第412回 外国人と向き合う ②

 少し前、2010年に発表されたJNTOの調査がある。

 日本へ来る前に期待したことを尋ねると「日本の食事」(58.5%)と答えた人がトップ。

 次いで「ショッピング」(48.5%)、「温泉」(43.4%)、「自然景観、田園風景」(41.8%)、「伝統的な景観、旧跡」(37.6%)と続いた。

 同様にJNTOが2006年に行った調査によると、「日本の食事」と答えたのは19.4%に過ぎなかったが、2007年には36.5%、2008年には58.5%と、食が日本の観光魅力に欠かせないものになっているようだ。

「日本の食事」と答えた人に、特に満足したメニューを聞いたところ「寿司」(42.1%)と答えた人が断トツ。

 このほか「ラーメン」(20.8%)、「刺身」(19.8%)、「天ぷら」(11.1%)、「うどん」(8.9%)だった。

 「ラーメン」と答えたのは「台湾」(36.2%)、「タイ」「香港」(いずれも29.2%)、「シンガポール」(28.2%)、「韓国」(24.1%)など、アジアからの観光客が目立った。

 一方、「天ぷら」と回答したのは「英国」(20.6%)、「フランス」(18.4%)、「米国」(17.8%)、「カナダ」(15.1%)など、欧米から来た人が多かった。

 そして最新(平成25年1月~3月期)の全訪日外国人消費動向調査の結果が観光庁から発表されている。

 それによると、訪日外国人が日本国内において支出した一人当たりの旅行中支出額は平均112,594円であり、前年同期と比べ微減の4.0%減となった。

 しかし 訪日旅行の満足度は、「大変満足」39.5%、「満足」51.6%で、あわせて91.1%が満足している。

 再訪意向は、「必ず来たい」52.2%、「来たい」40.9%で、あわせて93.1%が再訪意向という結果となった。

 これは素晴らしい、高評価といえるだろう。

 食が日本の観光魅力に欠かせないものになっているのは、間違いない、でもこのメニューの中で、旅館がどのくらい貢献したかとなると、なんとも分かりにくい。

 トップ5のメニュー、「刺身」「天ぷら」は旅館でも定番だが、「寿司」「らーめん」「うどん」は、メイン献立から外れる。

 食が満足度の主要要素をなすならば、93.1%が再訪意向という中に、「もう一度旅館へ泊まって、旅館の料理を食べたい」という希望は、ダイレクトに伝わってこない。

 訪日外国人に、まだまだ「旅館」の存在は十分でないかもしれない。

 旅館に泊まり、ヘルシィーな和食を堪能する、最も日本らしい「じゃっパン・クール」体験を味わってみたら、「ラーメン」より、もう一度食べたいものが見つかるかもしれない。

 世界に向けて旅館の発信、和食の発信、彼らのより思いで深きジャパン旅行のためにパワーアップしなければならない。

第411回 外国人と向き合う ①

 『なまら』『でーじ』『でら』『めっちゃ』『ばり』『えらい』『ごっつ』、これらの言葉は方言で、標準語では『とても』『すごく』という意味の言葉になる。

 さて、ではこれが英語だとどうなるだろうかと考えてみた場合、すべてが『Very』になる。

 ここが、日本語が難しいと言われる箇所の一つで、英語では『Very』という1つの表記が、同じ日本語でも、こんな小さな島国日本は言い方が様々である。

 普段日本で生活している日本時には、方言の意味がなんとなくわかるが、これが外国人となると、非常に分かりづらいと思われる。

 このことは、一つの例であるが、日本にインバウンドを迎えるということは、想像以上に大きな壁があり、それは営業、マーケティングの問題だけではなく上記のように我々が普段感じている言葉の壁以上の言葉の壁があるのである。

 ところで日本の少子高齢化の問題を考えてみた場合、国立社会保障人口問題研究所によると、日本の人口は年々減少する傾向にあり、2045年過ぎに1億人を割るとの見通しが立っている。

 きわめて単純な議論で考えれば、現在の人口を1億2千万人だとすると、1億円になると消費者人口も考えると、現在の売上よりも17%減少するということになる。

 とても乱暴な話ではあるが、消費者人口が減るのも実際であり、それに伴い売り上げが減るということは明らかである。

 そのため、以前より生き残り競争ということが注目されている。

 つまり、言い換えれば、人口が減るということは、それぞれの産業分野において、淘汰されていくということなのである。

 では、世界の人口をみるとどうであろうか。

 国連 の2011年発表の World Population Prospectsによると、現在約70億人の世界人口は日本が1億人を割り込む2045年過ぎには90億人を突破すると予想されている。

 つまり、日本の人口は約17%減少するが、世界人口は約30%増加するのである。

 ここでまとめて考えてみたい。

 非常に乱暴で、単純な発想で恐縮ではあるが、旅館で考えた場合、将来的には人口の減少に伴い、宿泊客も減り売り上げは減少する。

 しかし、海外にも目を向けると、その部分を上回る宿泊客が待っているのである。

 つまり、外国人観光客を獲得できれば売り上げの減少以上の数字があるということである。

 もちろん、実際は以前も書いたが非常に難しく簡単な話ではない。

 しかし、外国人誘致に取り組むということも今後の大きな道筋の一つであることは間違いないのである。

 そこで、次回より外国人観光客への対応、インバウンド施策について考えてみたいと思う。

第410回 クレームと向き合う

 観光・旅行業界にいつもいると逆に見えなくなってくるものがある。

 消費者目線である。以前、この場で消費者感覚を忘れないようにということを書かせていただいた。

 たびたび耳にするのであるが、旅行、特にホテル・旅館のこととなると、誰もが専門家のような、一見評論家のような感覚をもって話すことがある。

 それは、誰にとっても旅行ということが特別で非日常だということ、それゆえ、期待値も印象も高いということである。

 だからこそ何気ないことが大きなクレームにつながる。

 そして、インターネットを通じて口コミという形で広がっていくという何とも苦しい循環を強いられている。

 特に、口コミは昔は信用度が薄く、近しい友人などによる情報でもない限りは重要視されなかったが、最近では口コミによって旅館を選ぶといった傾向もあるくらいである。

 言い換えれば、今まで以上に情報の伝達がいい情報も悪い情報もすぐに出回るということである。

 そこで、もしクレームがあった場合の対処法を確認していきたい。

 これはホテル・旅館に限った話ではないが、もしお客様からクレームがあった場合、最終的に良い結果につなげるということを帰着点として考えることが重要である。

 そのためのポイントとして、まずお客様の前では、1部下任せ、たらい回しにはしないこと、2こちらの言い分は我慢して、相手の言い分を聞く、3迅速に対応し、丁寧に詫びるの3つが挙げられる。

 そして内部的にはそのクレームを共有し、今後の発生を防ぐ方法を考えることである。

 クレームこそ、売り上げ拡大のきっかけになるのである。

 クレームが起こった場面は、いろんな形があるにせよ、その場面において普段気づかなかった場面であることが多い。

 その場面を迅速にカバーすることにより、今後の発生を防げる。

 つまりは、見つけられなかった減点箇所を修正できるのである。

 また、最近では、ネットの口コミ欄に書き込まれるケースが多いがすぐに返信をし、丁寧に謝罪する。

 ホテル旅館業は加点評価というよりは減点評価の意味合いが強い。

 それは前述したように、非日常的でみな楽しみにしている、期待値が初めから高いからである。

 それでもお客様は千差万別であるから減点場所はないとは言えないが、100-1=0にならないよう、また、なってしまうお客様を減らせるようクレームにしっかり耳を傾け、クレームをもらうということが明日の発展につながるのではないだろうか。

第409回 事業承継は至上命題 ⑤

 さて、事業承継について4回ほど書かせていただいたが、実は多いケースとして『後継者は決まっているが、まだ学生(子供)だ』などといったケースである。

 こんな場合は、後継者が大きく育つまで待つが、しかし時間がかかる。

 また、後継者は息子に決まっているが、今は大手の会社に勤めていて、あと何年も戻ってはこない、または継がないかもしれないといったケースもある。

 実は最近ではこのような悩みも解決する手段があるのである。

 今回は事業承継の中で、後継者がいるが今から時間がかかるかもしれないといったケースに対応する方法を紹介したい。

 その手段とは、平たく言えば人材紹介なのであるが、経営者に特化した人材紹介サービスである。

 というのもこの時期になると、大手企業などでは決算からの株主総会等の時期になる。

 すると、経営陣の大移動が始まるのである。

 この時期を狙い、経営者の人材紹介は行われるケースが多い。

 では、この経営者人材紹介はどの様な手段として利用するのかを具体的に考えていきたい。

 比較的多いケースとしては、後継者が育つまでの期間に代わりに経営を行う中継ぎ・リリーフと呼ばれるケースである。

 この場合、紹介される経営者は期間での契約となり、その期間経営を行う。

 そのため、事業承継の時期やタイミングを調整できることとなる。

 また、もし後継予定者が会社を継がないとなった場合の後継者候補として視野に入れられる。

 次に現社長がオーナーまたは会長として第一線を退くケースである。

 特に旅館業の場合、資産の多くが現社長個人に帰属しているケースなどが考えられる。

 経営の第一線からは退きながらも、会長やオーナーとして会社に対しある程度の影響力は残せるということが考えられる。

 最近のケースでいえば、現社長の右腕として手腕をふるうケースもある。

 この場合、紹介してもらうのは、経営者ではなく、たとえば副社長候補者や取締役として紹介して入社してもらい、紹介者は今までの経営の経験などを活かし、現社長の右腕、番頭として経営に参画するケースも見られる。

 いずれにせよ、経営者を紹介するというサービスがあるということ、そして、それを利用することにより事業承継をスムーズに行うことができるということ。

 このようなサービスがあるということにより選択肢に幅を持つことができる。

 大切なことは、きっちりと事業を承継する。

 そのための選択肢は多くそろえ、検討の上最善であろう形をとる。

 それこそが、事業承継の一番大切なポイントになると思われる。

 最後に加えて最近では後継者の配偶者を紹介するサービスなどもあるという。