第478回 マイナス評価について

 旅行で期待することはという問いに対し、常に上位を占める項目は、観光地などを押さえて、温泉、料理という項目である。

 そのほかにも、旅館の雰囲気や癒しなどが上位に入る。

 つまり、旅行をする際の目的地選びにおいて、観光地や名所という項目もさることながら、宿泊施設や土地柄、料理などという項目が大きいということが伺える。

 逆の発想からすれば、当たり前ではあるが、その項目に対し魅力的なコンテンツを用意できれば、集客につながるということなのである。

 さも当たり前なことをのべさせていただいたが、それこそがお客のニーズ、つまり期待値なのである。

 この期待値という見えない数字は実に厄介なものである。

 どういうことかといえば、数字で厳密に表現することは難しいが、例えば、いつも70点のサービス評価の旅館があるとした場合、60点の期待値で来るお客に対しては+10の満足度になり、80点の期待値で来るお客に対しては-10のがっかりした評価になってしまい、矢もすればクレームにつながってしまうのである。

 いずれにせよ上記の具体例のように70点の旅館でいいというわけではないため、お客がいずれの期待値で来てもいいように常に100点を目指さなければいけないのである。

 その対策として取るべき方法は2つほど考えて生きたい。

 1つは、マイナス評価につながる項目をなくすということである。

 例えば、部屋が汚れていたや、従業員同士が無駄話をしていた、こんな他愛の無いことでもマイナスの評価につながるのである。

 そして、怖いのがマイナス項目は仮に数字があり、マイナス10だとしても、答えは必ず0点になってしまうのである。

 これは期待値の怖いところで、つまり、わずかなマイナス評価の部分が今まで積み上げてきた評価をすべて壊し、その旅館の印象を0にしてしまうのである。

 一つ実際にあった話を紹介すると、ある旅館はチェックインの接客はもちろん、従業員はみな丁寧で、館内ですれ違っても必ず挨拶してくれる、料理も地の物を使い味もすばらしい、温泉もいいお湯ですべてが完璧であった。

 大変満足し、翌日チェックアウトを済ませ、駐車場まで車を取りに行くと、駐車場に送迎バスがあり、その運転手が外で何気なくタバコを吸い、ポイ捨てをした。

 もちろんこの運転手は挨拶もしなかった。

 この最後の出来事だけで、もうこのお客の評価は台無しであり、もう二度とこの旅館には行かないと仰っていた。

 なんとも残念で難しいのであるが、期待値からの、それ以前に評価のマイナスは答えが0になってしまうのである。

第477回 顧客満足度と印象

 顧客満足度という指標がある。

 customer satisfaction(CS)なんて最近では呼ばれるが、いかにお客様が満足していただいたかを指標にしたものである。

 ではこの顧客満足度はどのようにして把握すればよいのか、それは単純にアンケートでしかない。

 心理的、感情的なものを標準指標において数値化するということは実際問題として難しいからである。

 ではこの顧客満足度を高めるためにはどのようにしたらよいかということが問題になる。

 もちろん、日ごろから行っているサービス、食事へのこだわり、思いやりの接客など、様々な形でお客様に伝えていく必要があるのだが、大切なことは印象ということである。

 印象がよければその旅館自体の評価は向上する。

 もちろん、すべてというわけではないが、その印象は第一印象、期待値、そして最後の印象ということになる。

 特に『終わりよければすべてよし』『勝ってかぶとの緒を締めよ』など、日本のことわざの中には最後を大切にすることわざがいくつかある。

 感情的に考えてみても、最後は心に強く印象として残り、例えば旅行であれば最後の印象が旅行全体の『楽しかった』『つまらなかった』という評価につながるのではないだろうか。

 今回はこの印象ということに関して触れていこうと思う。

 まずは、第一印象について考えてみたい。

 旅館における第一印象はどこであろうか。

 よく言われるのが、フロント周りやエントランスということが上げられるが、自分自身が旅行に行くとして考えてみた場合、まずうける印象は、雑誌やホームページではないだろうか。

 特にホームページは近年の調査で事前に96%もの人が泊まる旅館のホームページを見てから行くという回答がある。

 そう考えた場合、旅館の館内の様子や食事の献立などは、事前にホームページで知っている状態でお客は来るのである。

 そのため、視覚に訴える旅館のホームページの写真はその旅館の第一印象を決定付けるとして非常に大切になるのである。

 そして、ホームページによってできた第一印象をもってお客は旅館に来るのである。

 つまり、初めての人でも、今までよりも詳細な情報をもって、その期待値を持って旅館にくるということになる。

 顧客満足度を考える上で大切なことは、その期待値についてである。

 次回はこの期待値について掘り下げていきたい。

第476回 経営者と従業員

 何事においても、その目的をはっきりさせなければ進めない。

 例えば、ゴールがどれくらい先かどうかによって長距離なのか、短距離なのか、その距離い合わせて走るペースが変わってくるのは言うまでもない。

 それを企業の場合は、経営理念や、経営戦略といった形であらわしている。

 しかし、それらの理念や戦略、つまり、その企業の目指すべき姿がそこで働く従業員全員に伝わっているのかとなるとはなはだ疑問である。

 そこで、今回は経営者と従業員の違いについて改めて考えていきたい。

 まず、大きく違うのがモチベーションの保ち方である。

 経営者は会社の利益が上がることに対しモチベーションを高く保つことができるが、従業員は違う。もちろん会社が多くの利益を出す方が気持ちの上で、そして現実的にボーナス面などにおいて従業員も恩恵を受けるのではあるが、基本的には給与、簡単に言えばいくらもらえるのかがモチベーションの大きな違いの部分である。

 そのため、会社が儲かっているなどは優先順位としては一番ではないのである。

 同様に休みも同じである。

 経営者は、休みに関してある意味自由であり、経営状態によっては休むなんて考えられない場面も多々ある。

 しかし、従業員側はそうはいかず、どんなんに忙しくても、会社にとって勝負の場面でも、きっちり休むことは休むのである。

 それが権利であるのでそこに何の問題もないし、当然の主張である。

 これは、もちろん一例の話であって、すべてが前述のような状態ではないのは間違いない。

 現に優先順位の一番が仕事で、仕事に対し骨身を惜しまず働くなどといったパターンも多々あるのである。

 しかし、現実的な話として、権利や責任が違うということは認識しなければいけない。

 そのため経営者と従業員は価値観や考え方が違って当然なのである。

 大切なことは、その部分をきっちりお互いに認識するということである。

 経営者側は従業員側のことを、従業員側は経営者側のことを理解し、お互いが相手の立場に立って物事を考えることによって、スムーズな組織環境が生まれると考えている。

 “チェンジチェアー”、お互いのイスを変えて物事を見ることによって、士会が変わり、相手のことを理解知ることができる。

 これも思いやりの一つなのではないだろうか。

 思いやりを実践するサービス業では、なおのことであろう。

第475回 事業承継の話

 前回、事業承継について触れたので、引き続き今回もその話をしたいと思う。

 企業はゴーイングコンサーンといい、半永久的に継続しなければいけないとされている、経営者の年齢や経営手腕に関わらずである。

 そのため、言わずと知れたことだが、後継者へと代々受け継いでいかなければいけない。

 そこでスムーズな事業承継が必要となってくる。

 しかし、昨今の事情をかんがみるに、日本の中小企業の実に60%以上が後継者が居ないという状況にあるのである。

 そのため後継者問題はいまや日本の中でもっとも深刻なビジネス問題として位置づけられる。

 そのため後継者問題をどのように解決するかが大きな問題となっている。

 もちろん、これは旅館業においても深刻な問題なのである。

 そのための解決策を紹介していきたい。

 一つの手段としてあるのが、親族以外に後継者を指定することである。

 例えば、大企業であれば、経営者イコール血縁者とはならないケースが多い。

 もちろん株主の意向というものがその決定に大きな影響を与えることは言うまでもないが日本の中小企業の場合、経営者イコール筆頭株主というケースが多いそのため、なかなか血縁以外に後継者ということが見つからない。

 そのため、一つは従業員の中から次の後継者を選ぶということだ。

 そしてもう一つの手としては、最近ケースとして多いのだが、経営者自身を派遣するという人材紹介会社も存在する。

 なかなか難しいケースではあるが、選択肢の一つとして経験豊かな経営者を迎え入れるということもあるのである。

 そしてもう一つの手段としては会社ごと後継の会社を見つける、いわばM&Aという手法である。

 この手法の場合経営者は現場に必ず残るということではないが、会社自体は継続する。

 また、異業種との提携などより新しい可能性を生み出すケースもある。

 いずれの場合にせよ、ホテル、旅館は地元で大きな雇用をうんでいる経済の主体であると位置づけられる。

 そのため、事業承継をスムーズに行っていくことは地域経済において非常に重要なのである。

 仮に事業承継に失敗してしまうと、地域経済において大きな打撃を与えてしまう。

 事業承継は確かに簡単なことではない。

 だからこそ、しっかりと来るべき時に備え準備しておく必要があり、そのための選択肢を数多く用意する必要があるのである。

第474回 相続税の話

 最近、よく『相続税対策』といった文字を目にする。

 というのも、2015年1月1日より、相続税が大幅な改正になり、今まであった相続税計算の控除額が大幅に引き下げられる。

 つまり、感覚的には増税ということになる。

 そのため、相続税対策をしておく必要があるということで、マスコミを始め様々なところで取り上げられている。

 実は会社経営にとっても非常に密接な関係にある相続税について少し触れて行きたい。

 本来的、会社が法人であれば、会社の資産は会社の物であるため、その部分については相続税というものは発生しない。

 しかし、個人の相続税を考える際に会社と密接な関係にあるものを2つほど紹介していきたい。

 税法上、様々な表記・名称があるが、ここでは、わかりやすくするために簡素な表現を用いることをご理解いただきたい。

 まず、一つ目は、科目の名称は様々ではあるが、その他借入金、つまりは、社長からの個人的な資金提供の部分である。

 会社の運転資金や資金繰りといったものが厳しきなった場合、社長の個人財産を会社に入金するケースである。

 これは会社としては負債と言いながらも、実際の現場での返済の優先順位としては低い。

 また、役員報酬を設定しながらも受け取らなかった場合、役員借入金として同じような処理になる。

 この借入金は会社からすればありがたいものなのだが、会社から返済してもらう権利という形で個人では財産となり、万が一の場合では相続財産となってしまう。

 中小企業の場合、この部分は非常にケースとして多く、見逃してしまいがちである。

 もちろん、対策や方法は様々あるので、会社に多く資金投入している社長は注意する必要がある。

 もう一つは、自社株ということである。

 自社の株の額は、資本金の出資額ではない、会社の今持っている資産・財産によって変動するものなのである。

 特に業界の体質的に、ホテル旅館業界では、借入金の額も大きいものの、土地や建物といった資産を多く所有しているため、自社の株の評価額はびっくりするほど高くなるケースがある。

 その場合、社長がこの株を後継者、身内に譲る際に、やはり財産の移動が発生し、万が一の場合は相続税大正となってしまう。

 いずれも、会社の事業承継の際によく見かける案件である。

 ゴーイングコンサーンに基づき、会社を存続させなければという観点から考えるに、事業承継問題は優先順位の高い問題でもあり、同時に経営者個人と考えた場合でも、家族の為にしっかりと事業承継、相続のことを考えて行かなければならないだと思われる。