20年ほど前、インターネットの普及に伴い世界中の人たちと簡単につながれるという話があった。
しかし、世界中にもともとネットワークがあった一部には飛躍的な話であったが、世界中の人たちと友人がいない場合はなかなか実感できなかったのが本音であった。
ここで世界の人口を考えてみたい。
世界の人口を見たときに、2011年の調べによると、圧倒的な1位はもちろん中華人民共和国(以下、中国)で約13億5千万人、2位はインドで約12億人、と世界総人口約70億人に対して、この2か国で約36%を占めており、続いての3位のアメリカ合衆国が約3億人なことを考えると、圧倒的である。
では、これに対してインターネット利用人口はどうであろうか。
実はインターネットの利用人口は約20億人であり、単純比較はできないものの、世界のマーケットから考えると、実に大きな市場であると言える。
そして、このインターネット業界の中でも昨今注目されているのがソーシャルネットワーキングサービス(SNS)であり、その代表格が『facebook(以下、FB)』である。
そもそもSNSとは、人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型の会員制のサービスと定義されており、簡単に言えばインターネットを通じて色々な人とつながれるサービスのことである。
そして現在FBに登録している利用者数は2011年3月現在、約8億4500万人もの人間が利用している。
先ほどの世界人口に仮にあてはめてみると、アメリカを抜いて世界3位の規模なのである。
このことを鑑みるに、これを日本の観光業、ひいては個々のホテル・旅館に取り組むということは一つの大きな販売戦略になるのではないであろうか。
もちろん、言語が異なるため、FBとはいえ整えるべき環境はあるのだが、現に日本のホテルや旅館でも積極的にFBに取り組んでいるところは多い。
最大の魅力は、その情報発信の方法にある。
今までのHPは新しいコンテンツを更新しても、閲覧する人がいなければ効果が薄いいわば受け身の姿勢であったが、このFBを始めとするSNSは自ら情報を積極的に発信することができるのである。
魅力をアピールするには、周知し次に認知してもらうという基本的な流れがあったが、まずは周知する。
様々な課題があるにせよ、この周知という部分を担っていくうえでFBを始めとするSNSは今後ますます無視できない存在になるのではないだろうか。
| 2012年06月19日|
5月24日に日本政府観光局(以下JNTO)から中国の旅行会社に訪日旅行についての新しい調査結果が発表された。
この新聞でも掲載されていたが、「今年期待できる訪日旅行のテーマ」を複数回答で聞いたところ、全体の63%が温泉を挙げた。
2位は「ショッピング」で59%だった。
以下は桜の花見が56%、スキー・雪遊びが50%、秋の紅葉が48%、美食が46%、マンガ・アニメが44%などだった。
この調査結果をふまえ、今回では今後の対中国方針を考えていきたい。
まず、温泉について考えていきたい。
前述の結果のように中国人訪日旅行客にとって日本の一番の魅力は温泉にゆっくりつかることである。
もちろん中国にも温泉はあるようであるが、日本の温泉とは様子が違うようで、簡単に言えば、みんなで入浴する規模の大きな浴場といったものには馴染みがない。
しかし、日本人同様に、中国人も、温泉につかり、きれいな景観を楽しみ日常の疲れをどっと落とすということに非常に関心があるのだ。
ここで問題になるのはマナーの問題、いや、文化の違いである。
例えば中国人は人前で裸になることに慣れていない。
そのため、温泉でもタオルを付けたまま入ることや、下着を付けたまま入浴するなどの話を聞き、その話は中国人はマナーが悪いという話として聞く。
さらに、中国人は声が大きい。
そのため知人同士の会話も言葉がわからない日本人が聞くと喧嘩をしているように聞こえる。
そのため、温泉で中国人旅行客と一緒になった場合、マナーが悪く騒がしいといった印象になることが多いのだといえる。
しかし、ここで考えられるのマナーの問題より、文化の違いなのである。
では、どうし中国人旅行客に対して日本の文化をしっかりアナウンスしてあげることである。
もちろん中国人旅行客を受け入れるうえでは、中国人旅行客に限定し宿泊をとり、中国の文化に合わせるといった方法の方が簡単で早い。
しかし、その方法ではいつまでたっても日本人旅行客と中国人旅行客は共存することができなくなってしまう。
そのため、日本の文化を掲示板や案内の接客係に伝える必要がある。
今後訪日する中国人が増えていく中、前述の調査結果のように温泉をはじめ、花見、紅葉といった日本の文化に関心があるため、日本の文化をしっかりと中国人旅行客に案内する。
そこに、共存するための対中国方針の鍵があると考える。
| 2012年06月19日|
2011年、訪日した外国人旅行者は622万人。
それを国・地域別の割合でみると1位、大韓民国(以下韓国)で約166万人、2位、中華人民共和国(以下中国)で約104万人、以下台湾、香港、タイと続いている。
一目でわかるように圧倒的に訪日する外国人旅行者はアジアが中心なのだ。
昨年は東日本大震災の影響で訪日旅行者は対前年比72.2%と落ち込んでしまったが、2010年は861万人が訪日している。
観光庁のビジット・ジャパン・キャンペーンでは訪日外国人旅行者目標を1000万人と設定しており、目標には若干届いていないが、観光庁は2013年にその目標を達成することを目指しており、その方針の核として、中国からの旅行者を現在の4倍近くの390万人に増やすことを目指している。
このことからもうかがえるように、今後外国人ということが一つのポイントと言える。
中国人旅行者を考えるうえで外せないのが『ゴールデンルート』と呼ばれる、新幹線・富士山・家電といったツアーである。
しかし、日本政府観光局(JNTO)が調べた最新の調査によると、中国人旅行者の訪日に期待することでは、1位、温泉、2位、食べ物となっており、大都市圏を巡るいわゆる『ゴールデンルート』とはニーズが異なってきているように思われる。
そのため、中国人旅行者をターゲットにするのであれば、『ゴールデンルート』に変わる新しい旅行を創出できるのではないだろうか。
もちろん、文化の違いや中国旅行業者の問題など、乗り越えなければいけない壁はたくさんある。
よく失敗談も耳にするが、温泉と食べ物・食事と考えた場合、どのような施設が中国人旅行者のニーズを満たしているのかは言わずもがなである。
では、中国人旅行者を『ゴールデンルート』以外で呼ぶにはどうしたらよいのか。
そこには中国側の問題がある。
簡単に言ってしまえば、日本の温泉地を知らないのである。
中国人に人気の旅行地で実は2位に北海道が挙げられているが、これは中国のテレビドラマの舞台に北海道が使われからで、中国人旅行者こそ、日本に温泉と食事を期待して旅行をするが、という状態である。
ここにいち早く、そして施設単位ではなく温泉地として取り組む。
そこに今後のインバウンド施策の鍵があるのではないだろうか。
| 2012年06月19日|
大学時代の一般教養で国語を履修した際に、当時の先生から印象的なことを言われたのを今でも覚えている。
『外国の友人が日本に来て、あなたに歌舞伎を見たいと。歌舞伎とはどんなものか教えてくれと言われたら、あなたは説明できますか。』と先生に質問された。
ところがその質問に答えられる学生はいなかった。
今思えば、日本人としてなんと恥ずかしいことだったろうか。
今現在、アジアを中心とした諸外国からの外国人観光客の誘致を2003年より観光庁より『ビジット・ジャパン』キャンペーンを始めて、積極的に進めているが、肝心の日本への旅行目的をはっきり見定める必要があるのではないだろうか。
日本政府観光局(以下JNTO)の調査によると、2009年、外国人観光客の訪問調査では1位新宿(34.5%)、2位銀座(26.5%)3位浅草(24.2%)以下大阪、渋谷と続いており、東京を中心とした大都市圏に集中していることが伺える。
ところが、同じくJNTAの調査で外国人観光客が訪日前に期待していることの調査によると、1位日本の食事(58.5%)2位ショッピング(48.5%)、3位温泉(43.4%)、4位自然景観(41.8%)以下伝統的な景観、歴史的建造物と続いている。
この結果より考察するに、外国人観光客は日本の食事や温泉、日本の文化に触れることに期待し日本に訪れるが、日本では大都市圏のみの体験にとどまっていると言える。
もちろん交通だとか諸問題はあるが、はたしてこれでよいのであろうか。
例えば、外国人観光客の日本において最も印象に残った食事はという調査で1位寿司、2位ラーメン、3位刺身となっており、その中には日本の懐石や伝統料理は入ってこない。
食べたのか、食べていないのかはわからないが、何とも淋しい結果だと感じる。
さて、外国人観光客が期待していることを満たすのは果たしてどこだろうかと考えると、自ずと答えは出てくる。
それは旅館である。
旅館という場所には日本の文化が詰まっている。
食事は和食、温泉につかり、浴衣で過ごす。
部屋は畳敷きが多く、椅子ではなく生活をする。
まさに日本文化の代表と言える。
しかし、昨今、日本人でさえこの日本文化を継承していない人が多いのではないだろうか。
このシリーズでは日本文化に触れながら、外国人観光客誘致も一つの再生の切り口であると位置づけ考えていきたい。(続く)
| 2012年06月19日|
特にこれといった売り物はなく、温泉街の中でも控えめな存在の小規模旅館は、なじみ客を中心に今日まで経営を続けてきた。
実はこのような規模・形態の旅館の数が最も多いのである。
これら小規模旅館の共通する特徴は、典型的な家族経営で世襲であること。
客室数は20室に届かない。
直近の売上高は一億円を切っている。
メインの金融機関は地元の信用金庫、といったところだ。
このような小規模旅館においても経営状況は総じて悪化してきている。
バブル期に身の丈以上の設備投資を実施せず、借入金がほとんどないところは、廃業という道を選ぶことは比較的容易だ。
息子はサラリーマンになり、自分たちは年金で暮らせば何とかなる。
しかし、投資投資を実施したがその効果が出ず、借入金が過多となっているところがある。
そのような旅館はキャッシュフローから返済財源が確保できず、きわめて深刻だ。
一方債権者である金融機関自体の体力も大いに影響してくる。
かつては親身になって面倒を見てくれた信金は、統廃合を繰り返し、貸出先に対する姿勢は様変わりしたというケースが多い。
とりあえずは中小企業金融円滑化法に基づいて、返済を猶予しているが、今年度末を見据えて早急に実抜計画を提出するよう迫ってくるところもある。
この要請に対し、対応に苦慮しているある旅館経営者は「ここまで経営が悪化したのは、外的環境の変化に対応仕切れなかった自分に責任がある。
しかし、今年度中に好転させる材料や具体的方法がまったく見えないというのが本音だ」と語る。
今後は他に取って代わられても影響のない旅館は存在自体難しくなる。
したがって、顧客にとっての存在価値を旅館自らが作り出すしかないのである。
そのための重要ポイントは、我が宿の得意分野・強みを徹底的に伸ばしこだわることだ。
ここまでやるかと思うくらいに選択と集中を図ることである。
これを具体化してはじめて既存客を引き止め、見込み客を呼び込む可能性が生まれてくる。
わざわざ宿泊する価値を創造することこそ、今まさに旅館経営者にとって求められる力量である。
小規模旅館にしかできないことは、実はたくさんある。まずはそれに気づくことらだ。
| 2012年05月25日|