アベノミクスの影響なのか消費の増える傾向の中、一方で円安や新興国の需要増などによって食料品を筆頭に様々なものが値上げの傾向にある。
また、昨今の消費税の増税など、いい話題と厳しい話題とが入り混じる中、価格ということについて考えてみたいと思う。
突き詰めていくと、利益を上げるためには、売上を伸ばすか、経費を下げるか、またはその両方かという3パターンしかない。
そのうち、売上に関していえば、売上を伸ばすには数量を増やすか、単価を上げるかという方法になってくるのであるが、問題は単価の設定方法である。
とくに旅館商品の場合、そのサービスに対し単価が設定される。
もちろん料理などの場合仕入れ値から逆算しその単価は比較的設定しやすいのではあるが、それはあくまでも経営サイドの話であって消費者サイドの話ではない。
以前この場で記載させていただいたハウステンボスを見事に再建させている澤田氏の話を引用させていただきたい。
澤田氏は元々、HISやスカイマークといった企業の創業者で、いずれの企業の特徴も、他の同業他社にくらべ価格設定が低い、つまり安価に設定しそのパフォーマンスでシェアを伸ばしてきた企業である。
そんな澤田氏がハウステンボスの再建に乗り出した際に、同じように入園料の価格を下げ来場者数を増やすといった手法に着手した。
通常の営業価格よりも下げたプランを様々用紙、中には夕方以降は入園料を無料にするという手に打って出たのである。
その結果、来場者数はどうなったかというと、大きな変化は見られなかったとのことだ、入園料を無料にしても。
現在ハウステンボスは創業以来18年連続だった赤字から脱却し、今期は最高収益をあげ経常利益ベースでは本体であるHISを上回るとの話だが、その要因は来場者数が年々右肩上がりに伸びているということと、そして、価格は今は下げていないとのことだ。
ではなぜ、価格を下げずに来場者数を伸ばしているのか。
それは、ハウステンボスの付加価値、訪問することによって得られる満足度の問題なのである。
偉そうな言い方で恐縮だが、ハウステンボスはお金を払ってでも行きたいと思わせる場所なのである。
以上のことより考えるに、価格は消費者目線で、お金を払ってでも味わいたい、経験したいと思わせるものに対する対価なのである。
当然のことながら、価格を上げるということは至難の業ではあるが、それに見合う付加価値を提供し、それ以上の満足度をお客様に味わってもらうということをしっかり構築すれば、できなくはない大きな手法なのではないだろうか。
| 2014年11月10日|
東京都台東区谷中。
近年では周辺の千駄木、根津と合わせて『谷根千』なんて呼ばれ方もする地域で、この地域はどこか懐かしい日本の風景を今も残している、いわゆる下町と呼ばれる場所である。
この場所にあまりにも有名だが、世界に向け日本を代表する旅館『澤の屋』がある。
観光カリスマにも任命されているこの旅館はあまりにも有名なので、ここでの紹介は簡単にさせてもらうが、この客室12室の澤の屋旅館の客室稼働率は平均しても90%以上でほぼ満室、そのお客の大半が外国人観光客である。
さてここで取り上げたいことはインバウンドではなく、差別化ということに注目していきたいと思う。
澤の湯は建物が古く、また、谷中という土地柄、交通網の発達した東京での観光宿泊ということに限界が来たのである。
露天風呂もない、温泉もない、ましてやトイレも各部屋には難しいという状況の中、日本人の観光客が減り一時は経営難まで陥った。
そして自旅館を改めて見直し、自旅館の売りを探したのである。
一つは日暮里駅に近いということである。
日暮里駅は東京都内を環状するJR山手線の駅でもあり、そして、成田空港からの直通列車が到着する駅でもある。
この地の利を生かし外国人に目を向けたのである。
そして、外国人が日本に来て味わいたいものは何か、外国人が日本に来て不安や不便に感じることは何かを徹底的に洗い出し、今までの旅館のスタイルをカスタマイズしていったのである。
とはいえ、何か真新しいものをやったわけではなく、日本人が日々習慣として行っていることを外国人に自分たちのできる範囲、つまり手作りで提供したのである。
例えば、日本は四季があり、そのそれぞれに多くのイベントがある。
正月には獅子舞があり、おせち料理やお雑煮、2月になれば節分、花見、しょうぶ湯など様々な歳時記ごとのイベントを一つ一つ丁寧に行ったのである。
また町内会のお祭りにも宿泊客が参加できるようにし、見るだけではなく、実際に宿泊した外国人旅行者はおみこしを担いだりと体験できるのである。
これらは外国人からすれば物珍しく、ホテルに宿泊するよりもいわゆる日本感を味わえるのである。
さて、澤の屋から学ぶこと、それは外国人旅行客を受け入れる時のコツや注意事項も当然ながら、その根本である、澤の屋の圧倒的な特徴である外国人観光客の受け入れに特化するという舵を切った営業戦略ではないだろうか。
営業戦略を決定する上で、まず、自旅館の特徴・売り、そして気づいていない日常、それらを資産と考え、ターゲットを絞り込み特化する。
自企業にはまだまだ気づいていない資産が眠っているかもしれない、今一度自社の資産を掘り起こしてみると新たな気付きがあり、それが大きな差別化になるのである。
| 2014年10月24日|
金融リスクという課題がある。
広義においては金融商品、有価証券取引等において起こりうる価値の減少等によって引き起こされる現象であり、それに備える手段として様々あるが代表的なもので言えば保険商品の活用などがある。
しかし、中小企業等において起こりうる金融リスクとはこのような有価証券取引上の問題よりも、主に掛け取引や手形等においての場面である。
例えば、よく耳にする言葉として『黒字倒産』というものがある。
企業の成績は黒字であるにも関わらず、支払いが行えずに倒産してしまうというものである。
このからくりを紐解いていきたい。
そもそもなぜ黒字倒産という自称が発生するのか。
それは、入金と支払いのサイクルの時間差によるものである。
例えば入金の予定は掛けで行われたため2ヵ月後となる。
経理では実際の入金が無くても、売り上げた時点で『売上』として計上される。
会計でいえば相手勘定科目は売掛金となり、この処理にまったく問題は無いのである。
しかし、支払いがその入金までの間に発生し、その額が今の銀行残高よりも高額だった場合支払いが行えない状況が発生したり、入金されるべき相手が倒産をしてしまい入金がなくなったりする。
この状況が立ち行かなくなった状態の時、帳簿上は黒字であるにもかかわらず、しっかり売上を上げているにもかかわらず払えるものが無く倒産してしまう、かりに1ヵ月後には確実に入金があるとしてもである。
もちろん、対策は様々ある。
地道な例で言えば、支払いを1ヶ月まってもらうことや、銀行から短期的に借り入れを起こす、手形の場合裏書で支払いをする、手形の割引をするなど実際の現場ではあの手この手でこのような黒字倒産を起こらないように対策をしている。
では、大切なことは何か。
それは、通常管理する損益計算だけでは見えてこない、実際のお金の有無を把握する、いわゆるキャッシュフローの流れを抑えることである。
そして、いつ入金がありいつ支払いがあるかキャッシュフローの流れを管理し、それにあわせてきっちりと対策を行うことなのである。
そのため、経営者は数字に強くなければならない。
なかなか現場という場面から会計に携わるということは難しいかもしれないが経営者は数字をしっかり把握し、強くなるひつ必要が必ずあるのである。
数字に強い経営者をぜひ目指していただきたい。
| 2014年10月17日|
事故や天災を事前に予知して置くことは、大切なことなのだが現在の科学技術を持ってしてもなかなか難しいのが実際のところ。
さて、そんな事故や天災といった、急激・偶然・外来と呼ばれるものに対ししっかりと供えをしておくことという考え方にリスクマネジメントと呼ばれるものがある。
どういう意味かと言えば、読んで字のごとくなのであるが、リスクをマネジメントつまり管理する、想定されるべきリスクに対し備えを十分に行いリスクを回避するというものである。
このマネジメントの方法には大きく分けて2つの管理方法がある、ここでそれを考えて行きたい。
まず、その前に大前提として、ここで言う『リスク』とはそもそも何であるかということである。
もちろん、上記のような事故、天災といったものもそうなのであるが、こと会社経営において想定される『リスク』とは広義で『倒産』のことを意味している。
つまり、例えば、地震が発生し、それにより建物に被害が発生、そのために営業を行うことができず倒産・廃業ということの無いようにするということである。
このようにして考えれば2つのマネジメント方法はより具体的でわかりやすくなるのではないだろうか。
1つ目は、未然に防ぐという方法である。
上記の地震の例で言えば、いつ来るかわからない地震に備えるために、建物の耐震補強を行うこと、そして地震が発生してしまってもお客様に被害が及ばないようにしっかりと避難経路の確保避難訓練の実施が行われていることなどとなる。
これは様々なリスクを先に想定しておく必要があり、当然費用対効果の部分も含め、無駄な投資にならないようしっかり計画立てて備えておく必要がある。
そしてハード面の補強となると費用も多くかかるケースが多いので、まずは従業員対応ということを含めソフト面の拡充を目指すことが第一歩ではないだろうか。
2つ目は、実際に起こってしまった後の倒産リスクを防ぐという方法である。
これは保険で補うのが一般的であろう。
有事の際に突発的な多額の支出、これにより経営を圧迫してしまうことの無いようにしなければいけない。
いずれにせよ、どちらか片方で十分ということはなく、しっかりと両方備えておく必要があるため、無駄にならないよう、自社の想定されるリスクを抽出し、無駄の無いように見直しておく必要があると思われる。
しかし、会社の倒産リスクは何も上記の有事だけではない。
金融リスクがある。
これについて次回触れて行きたいと思う。
| 2014年10月09日|
一般的な話になるが、目的と手段という話が特に経営管理の立場になるとよく耳にする。
要は、目的のために取るべき手段はどの様にしたらよいのかということであって、逆の発送より、目的の為に手段はいくらでもあるので、その2つを同じテーブルで履き違えないということである。
最近特に、現場で、この問題を目にすることが多い気がする。
今やろうとしていることは何のためなのかという自身の立ち位置を見失っていることが多いのではないだろうか。
典型的な例として、会議のための会議を行い、中々前に進まず、資料作りに時間を忙殺されているケースがある。
これはまさに本来の目的を見失っている話である。
大切なのは、会議を行うための目的、会議で検討すべきこと、そして、それが経営にとって上向きの影響を与えることなのだが、それを見失いまさにもったいないということである。
同じように良く目にするのが時間の問題である。
人は基本的にそれぞれがまったくの別であるが、唯一、周りを流れる時間だけは平等なのだと倫理や、哲学の世界では言うがまさにその通りで、どんなに利益を上げる旅館も、経営が苦しいホテルも1日は24時間であり、どこにいても翌日は訪れるのである。
しかしながら、現場ではなぜと思われるような時間の使い方をしていることが多い、特に会議である。
日本人特有なのだろうか、比較的会議が多い国民性なのかもしれないが、何も、売上を上げる時間、例えば夕食時の時間に会議を行う必要性はなく、その時間があれば、すこしでも飲料売り上げを上げるや、付帯収入を増やすといったことに時間を費やすべきなのではないかと思う。
なぜ、このようなことを書いたかと言えば、このような光景を何度も目にしているのだ。
おそらく皆様もご経験があるだろう。
もちろんすべてが無駄であるとは思わないものの、大切なことは、しっかりと自分の立ち位置を確認し、目的は何なのかを見極め、そして、時間を有効に使い最大限の効果を上げるということなのである。
能の話であるが、風姿花伝の中に『段取り八部』という言葉が出てくる。
この言葉のとおり、事象に関しては事前にいかに準備を行えたか、しっかりと供えられているかで80%が決まるということなのである。
仕事とはかくあるべきであると考えている。
それを踏まえ、次回以降、段取りつまり予測される部分そしてリスクマネジメントについて少し触れて行きたいと思う。
| 2014年10月03日|