会社の社長でも、ティッシュ配りのアルバイトの学生でも、態度の悪い喫茶店のウェイトレスでも、警察官でも、医者でも、テレビのタレントさんでさえ、どんな人でもお客様になる。
それが観光業、そしてホテル・旅館業だと思う。
以前、納入業者だって、今は仕事上の付き合いかも知れないが、優しく接しておかないと、一歩出ればお客になる可能性があるんだからという話をした。
特に納入業者の場合は多くの同業にも出入りしてる可能性があり、また、イメージだが情報を持っているケースが多いように思う。
そのため、口コミなどには思っている以上に影響力がある気がする。
要は、いつ何時消費者になる可能性のある業種は普段が肝心ということである。
さて、前回より消費者が買おうと思う瞬間、業界で言えば、この旅館に泊まろうと思うためにはということをお話しした。
今回は少し別の切り口から考えて行きたい。
一つ話を考えてみたい。
東京のある小さなカバン屋さん。
小さな工房と店を構え家内工業で行っており、かばんはすべて社長であるお父さんのオリジナルで手作りである。
平均して、1つ2万円位のカバンを売っていたのだが、近年の不況のあおりを受け、売れ行きは大きく減少、また、なかなか流行のスタイルを取り入れられず人気も低迷してしまっている。
そこで、社長は今まで2万円だったカバンを思い切って、15,000円、10,000円と値下げをし、最終的には5,000円以下の商品も販売した。
その結果どうなったであろうか。
売れる個数に大きな変化は無く、むしろ値下げ分今まで以上に経営は厳しくなってしまった。
そこで、思い切って金融機関より借入し先行投資の意味で店舗を改装した。
そして、改装が終わった1か月後、同じ商品を陳列した。
インターネットでも販売した。
しかし、今度は2万円ではなく、同じ商品を5万円から10万円で販売を行った。
知っている人からすれば何を考えているのかという話だが、これが、商品が完売になるほど売れたのだ。商品自体は元々いいので、価格を上げたことにより、ブランド力が付き、価格満足度も維持できたのである。
ではなぜであろう、もちろん、立地やリニューアル等の条件はあるものの、こと価格に注目した場合、ここには消費者心理が大きく影響している。
次回はこの具体例を検証し、実際の現場でいかに実践するかを紹介していきたい。
| 2014年05月23日|
ゴールデンウィークを終え、一年で観光業の最大オンシーズンともいえる時期であったわけではあるが、傾向としてはどうだったであろうか。
この原稿を書いている段階では概ね良好ではあったものの、いい時期に比べるとやはり減少傾向にあるように感じられる。
その影響としては、やはり消費税の増税や日程の問題などが挙げられるのであろう。
しかし、それはあくまでも全体の傾向であって、正直ななおかつ偏ったことをいえば、自分のところがもうかればいいのである。
実際に、ホテル・旅館によって、差があるのも事実である。
ということより、傾向としては減少傾向にあるのかもしれないが、その中でも自分のところは満館にしたい、満館になるためにはということを考えて行きたい。
地域で観光客を呼ぶ。
もちろん大切なことである。
そのために、観光資源があるところのホテル・旅館では、地域としてイベント等に取り組み宿泊を狙う。
しかし、これはあくまでも観光資源がある場合である。
問題は観光資源に乏しいといった場合である。
その場合キーとなってくるのが、前回お話しした『差別化』である。
この差別化は徹底的に行った方が効果が高いということは前回で触れた。
そこで、まずは、きっちりとしたターゲットを明確に打ち出し、そこに集中していく戦略を取ることである。
例えば、このゴールデンウィーク等で旅行に出かけた際に、行き場所や宿選びのキーマンは誰であろう。
多くの場合は母や娘、つまり『女性』である。
では、女性がどのようにして旅行に行くかを考えてみる。
もちろん最近では宿選びにインターネットは欠かさない。
しかし、どこに行こうか悩んでいる場合に宿選びから検索をするかと思えば、おそらくはまず観光スポットからであろう。
では、どうすればいいのか。
つまりは需要を喚起させるということである。
旅行をしようと思っている人は観光スポットのから探す。
逆に考えれば、旅行の計画が無い人に、アピールをして旅行をしようという気にさせればいいのである。
もちろん簡単なことではないが、観光といったん関係ない場面でアピールをするということが意外と効果的である。
それは、ファッション誌などである。
普段の日常パターンの中のふとした瞬間にあ、このホテル行きたいと思わせること。
これがニーズ喚起なのである。
もちろんこれは一つの成功例の話である。
旅行を計画していなかった人が、旅行に行こうと決める場合は3月位だという。
このように一つのターゲットを絞って差別化を行ったら、次は行動パターンを把握し、ニーズ喚起に集中する。
こういったマネジメントこそが強みになっていくのではないだろうか。
おそらく多くの旅館が、来てくれさえすればと思っているのだから。
| 2014年05月16日|
ビジネスにおいて、他社よりも人気を博すにはどうしたらいいか。
これが市場の原則である。
そのため、様々な場面で他社よりも優位に、他社にはないことをという形で、いわゆる『差別化』が行われてきている。
しかし、この差別化は非常に難しい。
というのも、多少の違いの差別であれば、劣位が優位の真似をし、すぐに追いついていくからである。
そのため、この差別化は他に真似されない圧倒的でなければいけないのである。
その中でも、業界内で圧倒的になる、いわばナンバー1になること、これをガリバー企業と言ったり、その戦略を戦時中の作戦の名前より一つの分野に特化し圧倒的になるということよりランチェスター戦略と呼ばれたりもする。
さて、前々回よりハウステンボス再生の話をしてきた。
まもなくのゴールデンウィークにあたり、ハウステンボスは日本の中の人気スポットの一つになっていることは間違いないであろう。
では、今回は、ハウステンボス再生のマーケティングについて触れて行きたいと思う。
テーマパークというカテゴリーの中だと日本には圧倒的なテーマパークが存在している。
それは、ディズニーリゾート、そしてユニバーサルスタジオジャパンである。
この両テーマパークは圧倒的なブランド力があり、そしていずれのテーマパークも大都市圏近郊にあるのである。
そのため、集客力は他の追随を許さない強さを持っている。
さて、ハウステンボスはどうかと言えば、ブランド力は両テーマパークにはとてもかなわない、そして、近郊周辺も長崎市で40万人強、佐世保市で約25万人、佐賀市でも約24万人と周辺の人口を合わせても100万人に満たないのである。
この環境では、なかなかテーマパーク経営は厳しいと言わざる負えない。
そこで、ハウステンボスで取り組んだことがナンバー1を目指す圧倒的な差別化である。
言い方を変えれば、遠くてもわざわざでも行きたくなるような魅力的な場所、そうなるためには圧倒的な惹き付けるものが無ければいけない、それは他にはない真似できないもの。
しかし、キャラクターやアトラクションでは差別化にならないと考え、ハウステンボスが取り組んだ差別化、それは『花』と『景観』であった。
ハウステンボスには世界一が2つあるという。
それは、『100万本のバラ』と『1000万個のイルミネーション』だという。
この2つの世界一は世界中どこを探しても日本の長崎県のハウステンボスにしかない。
だからこそ、多少遠くても足を運ぶのである。
差別化ということに取り組むことは非常に難しい。
しかし、他社よりもということを望むのであれば、日本一、世界一になり、真似できない、ここにしかないという圧倒的な魅力を作るということが必要である。
中途半端な差別化はすぐに真似されてしまうので注意すべきである。
| 2014年05月02日|
前回に引き続き、長崎ハウステンボスの再生についてご紹介していきたい。
前回はハウステンボスで取り組んだ『選択と集中』についてお話しさせていただいたが、今回は、再生を手がけている澤田氏が柱としていることを2つほど書かせていただく。
もちろんあれだけの規模と大きな負債をわずか1年で黒字に転換するためには、これから紹介することだけではない。
当然、紹介以外にも具体的に税金面だったり経費面だったりと取り組んでいるのは言うまでもないが、これから紹介することは従業員についてである。
前回も紹介したが、ハウステンボス内を散策して気が付いたことに、『活気』というものがあった。
18年間赤字続きだったがためかハウステンボス内はとてもアミューズメント施設とは思えないような暗い雰囲気が蔓延していたという。
そのため、社長である澤田氏はまず、パーク内の人員の配置を集中させることにした。
そして、さらには、従業員に対し2つのお願い・約束をしたのである。
このことが結果的にのちに大きな成果を生むのである。
まずお願いしたことは、ずばり『掃除』である。
いい仕事は、いい環境からとよく言われるが、なかなか身の回りの掃除は習慣にならなければ。
そこで、当たり前の要ではあるが、まずは朝一番に自分の身の回りの掃除から始めるように徹底をした。
その習慣づけにより、意識の中に掃除をすることが当たり前になり自然とパーク内がきれいに、そして明るくなっていったというのである。
そして、2つ目は『笑顔』ということだそうだ。
なかなか毎日笑顔でいることは難しい。
しかし、それを社長より徹底し、特に『つらい時こそ笑顔を作る』ということを意識的に行うようにしたとのこと。
上記のような2つのことは、サービス業では当たり前のように言っていることではないだろうか。
しかし、できていない企業が多いのである。
それは、『掃除』『笑顔』ということが当たり前になりすぎてしまっているのかもしれない。
もう一度、今一度見つめ直し、このハウステンボスの例にあるように基本に返り見直し、そして、徹底し、特に社長や経営陣はもちろん、中間管理職が率先して行う。
このことにより企業の雰囲気が大きく変わるのだはないだろうか。
現にハウステンボスでは風通しがよくなり、従業員同士でどうすればより良くなるのかを自然と考え実践するような社風になっているという。
雰囲気を良くする、明るくする。
これらは数字の上では出てこない部分ではあるが、企業の経営に重要な意味を持つ要因であり、そして、社長自らが先駆者となって行わなければいけないことなのではとハウステンボスに気づかされるのである。
| 2014年04月28日|
企業を立て直す。
いわゆる再生を行う上では、様々なポイントがある。
以前から、お話しさせていただいているように、経営者が数字に強くなること、経営者の思いをしっかりすることなど、実務に照らし合わせた事例をいくつか紹介してきた。
今回は最近ではすっかり有名な話ではあるが、ハウステンボスの事例について紹介したい。
ハウステンボスは、長崎県佐世保市にあるオランダの街並みを再現したテーマパークで、1992年に開業した。
当初は話題になり、来場客数は1996年までに右肩上がりとなり380万人を記録するまでになっていった。
しかし、経営の状況は開業当初より厳しく、開業以来ずっと赤字が続いていた。
ニュースにもなったが、2003年まで一度も黒字に転換することなく、ついには会社更生法の適用を申請し、野村ホールディングスが再生を支援するような形で経営に参画した。
しかし、野村ホールディングスでも再生はできず、2010年に野村は撤退、変わってエイチ・アイ・エス(以下HIS)が支援することになった。
その間創業以来18年間、経営はずっと赤字であった。
HISの支援を受け、HISの現会長、澤田氏が社長に就任し創業から18年連続で赤字であったハウステンボスは、わずか1年で黒字に転換、直近の2012年11月から2013年7月期の連結決算では純利益56億円、決算での業績予想ではあるが100億円に迫るとされているほどの利益体質に改善したのである。
では、澤田氏はどの様に18年間赤字であったハウステンボスを黒字に見事に再生させているのか。
それは、難しいことではなく、ごくごく当たり前のことを徹底して行っているに尽きるのである。
そのいくつかを数回に分けて紹介していく。
まず、澤田氏が行ったことは、現状の分析とのことである。
まず、現状のハウステンボスの中を一人の消費者として園内を散策し、消費者の立場に立った場合の課題を抽出した。
それは、敷地面積・施設と従業員数が合っていないため、施設内にやっていないブースが多いということ。
そして、経営状況に伴いなのか園内がどことなく暗い雰囲気だということである。
そのため、澤田氏はまず、パーク全体の40%を無料エリアとして開放、残りの60%を有料ゾーンとした。
それにより、無料エリアには、わずかな施設を残すのみとし、有料エリアに人員を集中したため、パーク全体に活気と明るさが戻ったのである。
これは、よく言う『選択と集中』の代表例のような事案だと言える。
さて、ここで自社を振り返ってみてほしい。
今自社で無駄はないだろうか。
徹底し消費者の立場に立ち自社を振り返り、無駄があれば選択をし、パワーを別のところに集中させる。
これにより、雰囲気や活気が戻り、空気を変えることができるのである。
次回も引き続きハウステンボス再生の手法を紹介していきたい。
| 2014年04月21日|