第448回 他からの営業には優しく

 他からの営業には優しく。

 これは私が常々思っていることである。今回はそんな話をしたいと思う。

 デスクで仕事をしていると、色んな営業の電話がかかってくる、しかも頻繁にである。

 コピー機や電話は、いったい何を見て弊社にかけてくるのだろうかと思いたくなるような内容である。

 そして、そういう電話がある時は、タイミングが悪く正直に言えば厄介である。

 そのため、どうしても邪険に扱ってしまいがちではあるが、私はなるべく丁寧に対応しお断りするようにしている。

 それを紹介する2つのホテル・旅館の実体験エピソードを紹介したい。

 1つ目は、ホテルでの宴席の話である。

 小生の話で恐縮だが、私個人は仲間と趣味として太鼓を叩いておりその時は地元の医療法人グループの新年会の余興を頼まれた。

 その時に言われたことは、我々の太鼓一式を絨毯におかないでほしいとホテル側から言われた。

 なるほど大きな太鼓なので絨毯が傷んでしまうのは一理ある。

 しかし、我々の余興の時間までみんなで持っていてほしいとのことである。

 挙句の果てに、エレベーターはもちろん、業務用のエレベーターも使用させてもらえず、重い機材一式を階段で運んでほしいと言われた。

 いくら太鼓を叩く屈強な大人でも、さすがに1時間以上も手で持つこと、階段で機材を運ぶことは無理である。

 しかし、ホテル側は自身の都合を言うばかりで、我々のことは意にも解さずである。

 2つ目は、雑誌の取材の依頼の際の話である。

 仕事上、執筆・連載を行っており、多い時は月に数回取材の依頼の電話を掛けることがある。

 私は、意図的に予約の電話に掛けるようにしている。

 すると、始めは客かどうかわからないので、とても丁寧に対応していただけるのだが、取材の依頼だとわかると、手のひらを反してくるところも多い。

 いきなり、口調が変わり、中には怒りながら突然電話を切る旅館もある。

 断わっておくが、私の取材は費用はもちろん頂かない、一切無料である。

 そのような対応をされた旅館には、一生行かないであろう。

 少々愚痴っぽい話で申し訳ないが、どちらにも共通すること、それは『客ではない』ということであり、それが故に、対応が悪くなっているのである。

 しかし、考えてもらいたいのは、『客ではない』の前に、『今日は、』と付くことである。

 つまり、いつ何時、目の前の他人が消費者に変わるかわからないのである。

 経験則ではあるが、繁盛している旅館、評判の良いホテルなどは、客以外に対しても接し方が丁寧である。

 私はサービス業を営む上では当然と心得ると同時に、ぜひ自分自身を見つめなおしてもらいたい。

 客以外、納入業者や近所の人間、そして営業マンなどに対して、本人はもちろん従業員も客同様に思いやりを持って接すること。

 それこそが、明日の売上の第一歩であると気づいてほしい。

 最後に、できるなら弊社からの取材の際は優しくお願いしたい。

第447回 低価格戦略の失敗事例 テレビ番組

 マスコミに取材、取り上げられるとその効果は非常に大きい。

 特に、テレビで特集が組まれた場合、番組終了後から電話がなりっぱなしで、1~2ヶ月先の予約まですべて埋まってしまうなんて話も耳にする。

 とにかくその効果は絶大と言える。

 しかし、このテレビを使った広告宣伝には3つの問題がある。

 1つめは表示価格の問題である。

 テレビ等で表示される宿泊料金は、多くの場合1泊2食付の最低料金の場合が多く、また、○○○○円~といった一見すると一つの料金しかないように紹介されてしまう。

 旅館側としては、様々な商品があるにも関わらず、テレビの放映後はその価格帯が多く売れる。

 この商品の利益率がいい場合にはあまり問題は無いのだが、利幅の少ない商品の場合、他の商品は売れないと言うことよりを圧迫してしまい、結果としてものすごく忙しかったのに利益が残らなかったなんて話も数多く存在する。

 さらに最近では、その番組を見た人しか予約できない限定プランを作成して欲しいといわれる場合が多く、その多くが価格アプローチ、つまり、テレビを見て予約した人限定の安価なプランを作ってほしいと言われるのである。

 これでは利益幅はますます小さくなってしまう。

 2つめは上記の問題と関連するのだが、低価格商品を開発するために質を下げてしまうと言うことである。

 特に食材原価に関して安易に下げてしまうと、顧客満足度自体も下がってしまい、さらにいまやネットの時代なので、そのクチコミがあっという間に広がってしまう。

 ネットの恐ろしいところは、そのクチコミが残念な評価だとしてもなかなか消せないと言うことである。

 そのため、追加で言えば、忙しかったのに利益が残らず、その後の新規のリピーターの獲得につながらない上、ネットで検索された場合、悪評が閲覧されてしまいその後の新規客獲得が難しいという事態に陥ってしまう。

 3つめは時期の問題である。

 テレビとしても、ハイシーズン前に特集したい。

 その方が視聴率が取れるからである。

 しかし、ハイシーズンは旅館も好景気なので、比較的集客できる時期の場合、生産性の高い高粗利の商品も圧迫し、本来稼げたであろう部分も消えてしまう。

 そのための機会損失はかなり大きい。

 テレビや雑誌に取り上げられた場合、その宣伝効果は高いと言える。

 しかし、そのためには、事前にきっちり利益を生み出す商品を開発しなければならないし、そして、時期も検討し、なるべくオフシーズンに近づけることが必要となってくるのである。

第446回 低価格戦略の失敗事例 ランチパスポートの場合

 ランチパスポートというものをご存じだろうか。

 これは一つの地域において、食堂やレストラン等の協力の元、その本用の特別メニューを作成し、普段は800円とか別のの値段で販売していたとしても、その本を掲示すると一律500円で食べることができる本である。

 その本には、飲食店の紹介とスタンプ欄があり、本を掲示した場合のみ注文でき。

 そして、本を使ってランチを食べた場合にほんのスタンプ欄にスタンプを押してもらうということであり、1件につき3回分使えるということだそうだ。

 消費者にとっては、非常にありがたい話であり、また掲載店としても呼び水の効果があり、お客が来店するきっかけとして高い効果を上げている。

 しかしある地域において、この本が立て続けに発行されたことに若干の問題が発生している。

 店側としては、赤字覚悟で先行投資的な意味合いも含めて、この雑誌に協力し、来ていただいたお客に自分の店をアピールする呼び水として期待しているが、実際は一度来たお客は80店舗以上掲載されているので、再び自分の店を訪れてくれるまでのサイクルが非常に長く固定化しないこと、そして、赤字覚悟の投資だったが、期間が延長し、その注文しかなくなり利益が薄くなったことである。

 問題は、低価格とターゲットの問題である。

 まず、低価格商品についてであるがキャンペーンや、一過性の値下げ商品、これはタイミングを間違えた場合にその後の経営に大きな影響を及ぼしてします。

 今回のランチパスポートにしても、企画としては呼び水の効果は大きいと言える。

 しかし、時期的なものも考慮に言えた場合、2月や8月といった飲食店業界が全体的に停滞する時期に行うことは賛成であるが、繁忙期に差し掛かってしまった場合、本来の利益を生むはずだった部分に大きな影響を及ぼしてします。

 これによっての機会損失は非常に大きいのである。

 また、同じようにターゲットにも気を付けなければいけない。

 新規企画や目新しいものを好むお客層は、一過性に過ぎず、そのお客がリピートしてくれるまでのサイクルは非常に期間を要する。

 実際に、普段はサラリーマンの昼食を中心にランチ750円で営業していた店がランチパスポートに協力したところ、昼間の客は主婦層が多くなり、また500円の特別メニューしか出なくなった。

 そして、このブームが終わったころには、以前の常連であったサラリーマン層は別の店に行ってしまったのである。

 この例はホテル旅館業界にも同じことが言えるのである。

 次回はこの例より具体的に起ったホテル旅館業界の事例を紹介していきたい。

第445回 番外編・ソチオリンピックを見て思うこと

 先日テレビの番組で、フランスのパリにおいて、日本の弁当がパリで『BENTO』として大ブームだというニュースを見た。

 そのブームになっているBENTOはフランスっぽく、中身もパンや生ハムやと思いきや、日本における弁当と全く同じように、ご飯が中心で、おかずがあって、そのおかずも日本の弁当と同じように、鶏のから揚げの弁当や焼き肉弁当などである。

 パリの通常のランチよりも安く、手軽で、オフィスでも食べられて、しかも新しいということでパリのフランス人の心をつかみブームになっているとのことだ。

 なんとも、思いもよらないことだが、恥ずかしながら、その発想は私にはなかった。

 しかし、考えてみれば確かにおいしいし、便利だしと納得である。では、なぜ弁当が流行ったのか。

 その答えは日本のアニメーションにあるとのことだ。

 現在、世界中で受け入れられている日本のアニメ、特にフランスでは日本のアニメが非常に人気があるとのこと。

 そして、日本のアニメの中の弁当を食べるシーンがきっかけで、フランスで『BENTO』ブームが起こっているとのこと。

 ここで、言いたいことは、日本の印象というのは外国人はどこから得るのかということである。

 逆の立場に立って考えてみよう。

 我々の持っている普段のアメリカ人の生活のイメージはどこからきているだろうか。

 アメリカで実際に生活をした経験を除いて多くは映画によるものが多いのではないだろうか。

 つまり外国人にとっての日本のイメージもそれと同様に、日本の文化の一つとされている漫画やアニメからの影響が大きいのである。

 さて、2020年には夏季オリンピックが東京で開催されることが決定している。

 昨年は『和食』が世界無形文化遺産に登録された。

 実はラグビーのワールドカップも2019年に日本で開催することが決定している。

 これは日本を世界にアピールできるチャンスなのである。

 フランスでは海外からの観光客数は2012年調べで、約8300万人、アメリカの観光収入は約1,260億ドルそれに比べて日本は2013年にようやく1,000万人を突破したが、収入としては約145億ドルとアメリカの9分の1である。

 私はあえて言うが日本は経済的には先進国なのかもしれないが、観光は世界的に見て発展途上である。

 ここ数年間の日本のアピールこそが、5年後10年後のインバウンドへの大きな布石になるということは言うまでもない。

 観光業全体、いやそれ以上にメディアや今回取り上げた漫画やアニメも含め多角的に日本のアピールに取り組むべきであると、ソチの冬季オリンピックを見てて、ふとそんな気がしたのだ。

 ちなみにではあるが、温泉旅館を題材にしたアニメに『花咲くいろは』というアニメがある。

 石川県湯湧温泉が舞台になっており、外国人向け日本の紹介フリーペーパーにも紹介されている。

第444回 経営者に最も必要なことは⑨

 連日、首都圏では近年例にない大雪で様々な被害が出ている。

 ある程度は冬に雪が降ることは予想できていたとしても、ここまでの大雪はまさに想定外の出来事であろう。

 数回前にリスクマネジメントとの話をさせていただいたが、いくら事前に準備していたとしても、想定外のことが起ってしまった場合は仕方ないとするしかない。

 その場合はきちんと状況を見極めたうえでの早めの判断や決断が重要になってきます。

 そこで、経営者に必要なことと題して様々なことを紹介したが、今回はその総括として商品企画、差別化を図る場合を例にとり、その判断の上で重要な判断のポイントを考えていきたい。

 まず、何かの企画をする際の判断はどの様にしたらよいのか、ここのキーワードはドラッガーでもおなじみだが、選択と集中ということである。

 例えばターゲット、インバウンドも取り組みたい、団体客も来て欲しい、夫婦層にうける旅館にしたい、ファミリー層もということでもちろんどれも大切なのだが、エネルギーや資金、資本などは限られている。

 その限られた中で、最大の効果を上げるためにはあれもこれもという風に手を伸ばすのではなく、様々な選択肢の中から、自旅館に最も適したものを選択し、そこにエネルギーや資本を集中する。

 これにより、たくさんの物を同時に行っている場合よりも効果が際立ち、それが差別化へとつながっていくのである。

 そして、企画の骨組みが決まった場合はその中身についてより具体的な検討に入るのだが、ここで良く陥りがちなこととして本質を忘れてしまうということである。

 ここで重要なことは目的をはっきり常に見定め、それに向かっていく手段を考えるということ。

 そして、目的と手段を履き違えないことである。

 今検討していることは目的なのかそれとも手段のことなのか、もし手段のことであれば、何もこの一手だけというわけではなく様々な角度から別の方法も検討すべきではないかなどである。

 最後に、企画の主旨目的、取り組み方法が決まった場合はスピード感を持って取り組むということである。

 例えば、他の周辺の旅館は同じことができないか、もしできるとするならば、どこよりも早くそれを行うこと。

 それが故に他の旅館に対し差別化を図ることができるのである。

 しかし、かといって焦ったり勢い任せにということは失敗につながるので、可能な限り判断を急ぎ、決定したらスピードを持って取り組むということである。

 ビジネスの世界では当たり前のことだが、いざ改めて考えてみると忘れがちなこと、『選択と集中』、『目的と手段』、『スピード感』この3つを最後に経営者に最も必要なこととして挙げたいと思う。